なぜ「自分の良さ」が伝わらないのか
「SNSで発信しているけれど、なかなか自分の良さが伝わっていない気がする」
「競合が多い中で、どう差別化すればいいのか分からない」
「一生懸命説明しているのに、なぜか響かない」
個人でビジネスをされている方にとって、これらは共通の悩みではないでしょうか。
問題の本質は、「書き手の喜び」を語ってしまい、「受け手の喜び」を伝えられていないことにあります。本記事では、マーケティングの権威トム・ピーターズが提唱したパーソナルブランディング理論をベースに、起業家として「あなただから」で選ばれるための科学的アプローチをお伝えします。
1. セルフブランディングは「自分の強みの棚卸し」から
パーソナルブランディングとは何か
セルフブランディングとは、単に自分を飾ることではありません。
「自分はどんな特徴があり、どんな強みを持っていて、誰の役に立てるのか」を整理し、相手に正しく伝わるように整えることです。
トム・ピーターズの革命的提言
マーケティングの権威であるトム・ピーターズ(Tom Peters)は、著書『ブランド人になれ!』の中で、こう述べています。
「これからのビジネスにおいて、最も大切な仕事は、自分というブランドのマーケティング責任者になることだ」
トム・ピーターズは、『エクセレント・カンパニー』などの著作で知られる経営コンサルタントであり、常に時代の最前線を行く彼の独創的な言動は、驚きと賞賛をもって世界各国のビジネスマンに迎えられています。
2000年に発行された『ブランド人になれ!』は、パーソナルブランディングという概念を世界に広めた記念碑的な著作です。
企業名ではなく「個人の名前」が信頼の証となる時代
企業名ではなく「個人の名前」が信頼の証となる時代において、セルフブランディングは生存戦略そのものと言えます。
個人事業主にとって、「人そのものが商品」であることも少なくありません。受け手に対して「この人はこういう特徴があるんだな」「これが強みなんだな」という認識を持ってもらうことが、マーケティングとライティングの大きな価値なのです。
2. 「書き手の喜び」より「受け手の喜び」を優先する
フィーチャーとベネフィットの決定的な違い
ブランディングを考える際、陥りがちな落とし穴があります。それは、自分のこだわりや商品のスペックばかりを語ってしまう**「書き手の喜び」**に終始することです。
マーケティングの世界では「フィーチャー(Feature)」と「ベネフィット(Benefit)」という2つの重要な概念があります。
フィーチャー(Feature)とは
商品やサービスが持つ機能や特徴、仕様のことを指します。
「4000万画素カメラ搭載」「10時間連続再生可能」「防水仕様」といった、客観的な事実がフィーチャーにあたります。
ベネフィット(Benefit)とは
そのフィーチャーがどのようにお客様の問題を解決するか、またはお客様の生活をどのように向上させるかを指します。
マーケティングにおけるベネフィットは、特に「製品やサービスが消費者に提供する利益・便益」を指します。
「ドリルを売るには穴を売れ」
経済学者セオドア・レビット博士の有名な言葉があります。
「人々が欲しいのは1/4インチのドリルではない。彼らが本当に欲しいのは1/4インチの穴なのだ」
これは、「顧客は商品自体ではなく、商品を使って得られる結果を求めている」という意味です。
具体例:男性用ジェルのコピー
例えば、髪を整えつつ栄養も与える男性用ジェルのコピーで「二重作(にじゅうさく)ジェル」というものがありました。
- フィーチャー視点:「二重作ジェル」→ 機能は正確に伝わるが、書き手の論理
- ベネフィット視点:「フリーズハードジェル」「スーパーハードジェル」→ 使う人の感情や未来に寄り添う
機能は正確に伝わりますが、これは書き手の論理です。一方で、受け手(顧客)は「かっこよくなりたい」「しっかり固めたい」という未来を求めています。
そのため「フリーズハードジェル」や「スーパーハードジェル」といった、使う人の感情やベネフィットに寄り添う表現の方が、結果として選ばれるのです。
自社の強みを「ターゲットが喜ぶ形」に変換する
自社の強みを、いかに「ターゲットが喜ぶ形」に変換して提示できるか。これがセルフブランディングを成功させる鍵となります。
メリットは「商品やサービスの特徴や優位性」を強調します。対して、ベネフィットは、メリットによりもたらされる効果や恩恵、利益のことを指します。
3. ベネフィットの3つの種類
デイヴィッド・アーカーのベネフィット分類
カリフォルニア大学名誉教授で経営学者のデイヴィッド・アーカー(David Aaker)氏は、ブランド価値の研究において、ベネフィットを以下の3つに分類しました。
(1)機能的ベネフィット(Functional Benefit)
製品やサービスの機能から得られる、測定や数値化ができる具体的な利益です。
- 「吸引力が強い掃除機」→「短時間で掃除が済んで、別のことに時間を使える」
- 「軽量設計」→「重くないからラクに掃除ができる」
- 「保湿効果が長続き」→「一日中肌がしっとり保たれる」
(2)情緒的ベネフィット(Emotional Benefit)
製品やサービスを所有・利用する際に受ける情緒・感情面の良い変化を指します。
- 周囲とともに楽しめる、流行りのゲーム
- 列に並ぶ煩わしさをなくしたモバイルオーダーシステム
- 触り心地がよく安心感を与える子ども向けのテディベア
- ゴールドの線があしらわれ、高級感のある限定のエンブレムが付された特別仕様車
(3)自己表現ベネフィット(Self-Expressive Benefit)
消費者の自己概念を強化するものです。ブランドは消費者が自己表現を行う媒介物として、消費者の自己イメージの確認と強化を支援することができます。
- 環境に配慮した製品を選ぶことで「意識の高い人」としての自己イメージを確認
- 高級ブランドを身につけることで「成功者」としての自己表現
- 専門的なツールを使うことで「プロフェッショナル」としてのアイデンティティ確立
起業家のセルフブランディングへの応用
起業家が自分のサービスを伝える際も、この3つの視点が重要です。
- 機能的ベネフィット:「具体的にどんな成果が得られるか」
- 情緒的ベネフィット:「どんな気持ちになれるか」
- 自己表現ベネフィット:「どんな自分になれるか」
4. 「他人の脳」を借りてセンスを磨く
成功しているキャッチコピーを分析する
自分一人で考えていても、魅力的な言葉はなかなか出てきません。そこでお勧めなのが、世の中で成功しているキャッチコピーを分析し、ストックすることです。
実例を見てみよう
- 「当たり付き やめるの やめました」(ガリガリ君)

皆さんご存知「ガリガリ君」と言えば、アイスを食べた後の棒に「当たり」が付いていたら、お店でもう一本「ガリガリ君」がもらえるというもの。
この「当たりつき やめるのを やめました」は、コロナ禍で「食べた後のスティックをお店に持っていくのはいかがなものか」という検討がなされた際、実際に「やめるのをやめよう」と決断したことがそのままコピーになっています。
このコピーは、決して難しい言葉を使っていません。ですが、何を伝えたいかは明確です。「機能的ベネフィット」はないかもしれませんが、「情緒的ベネフィット」がある。セルフブランディングでも参考にできることがあるのではないでしょうか。
コピーストックの習慣化
気になった広告をスクショしたり写真を撮ったりして保存する習慣をつけると、自分のブランディングを考える際の大きなヒントになります。
実践方法:
- スマホに「キャッチコピー」フォルダを作成
- 街中の広告、SNSの投稿、Webサイトのヘッドラインなど、心に残った言葉を保存
- 週に1回、保存したコピーを見返し、「なぜ心に残ったのか」を分析
- 共通パターンを見つける(感情、リズム、意外性など)
なぜ「他人の脳」が重要なのか
優れたキャッチコピーは、何千万円もの広告費をかけてテストされ、洗練されてきたものです。
それらを分析することは、無料で一流のマーケターの思考プロセスを学ぶことに等しいのです。
5. まずは「質より量」で散らかしてみる
完璧主義は創造性の敵
完璧なキャッチコピーを一発で書こうとする必要はありません。
まずは自分の価値や魅力を**「散らかして」**みることから始めましょう。
数稽古の重要性
案を50個、100個と出し尽くした後にこそ、自分では気づかなかった意外な価値が見えてくることがあります。
多くのアイデアの中から「これが一番刺さる」というものを選び、磨き上げていくプロセスが、あなただけの独自性(ブランド)を作っていきます。
実践的なワークフロー
ステップ1:ブレインストーミング(30分)
- 自分の強み、経験、スキルを思いつく限り書き出す
- 顧客からよく言われる褒め言葉を列挙
- 競合にはない自分だけの特徴をリストアップ
ステップ2:ターゲット設定(15分)
- 誰の役に立ちたいのか明確にする
- その人が抱えている悩みは何か
- その人が求めている未来は何か
ステップ3:ベネフィット変換(30分)
- ステップ1の各項目を「だから顧客にとって何が嬉しいのか」に変換
- 機能的・情緒的・自己表現の3つの視点で考える
ステップ4:言語化とテスト(継続)
- 複数のパターンを作成(最低10個)
- 実際にSNSや提案書で使ってみる
- 反応を見て改善
こういったステップを、AIを活用して行うというのも一手だと思います。AIを活用したセルフブランディングについても、何かの機会にお伝えできればと思っています。
6. 起業家のための実践チェックリスト
セルフブランディングの3つの柱
あなたの魅力を「一言」で表すために、まずは以下の3つを意識してみてください。
1. ターゲットが抱えている悩みやニーズを深く知る
- 顧客インタビューを定期的に実施
- SNSのコメント、DM、問い合わせを分析
- 競合のレビューを研究し、不満点を発見
2. 自分が提供できる「解決策」と「その先の未来」を言葉にする
- フィーチャー(あなたができること)をリストアップ
- それぞれをベネフィット(顧客が得られる結果)に変換
- 3つのベネフィット(機能的・情緒的・自己表現)の視点で深掘り
3. 心に刺さる言葉を日常からストックし、数稽古をこなす
- キャッチコピーコレクションを作る
- 週に1回、新しい自己紹介文を書いてみる
- フィードバックを求め、改善を繰り返す
7. 「〇〇といえば、あなた」というポジションを築く
パーソナルブランディングのゴール
セルフブランディングのゴールは、**「〇〇といえば、あなた」**というポジションを築くことです。
トム・ピーターズは著書の中で、こう述べています:
「ブランド人とはどういう人間か、それは次のように考える人間のことだ。自分の仕事、自分の人生に、責任があるのは『あいつら』ではない。自分の人生は自分で生きるしかない。誰かに代わりに生きてもらうわけにはいかない。」
一貫性の重要性
パーソナルブランドを構築する上で最も重要なのは、一貫性です。
- SNSでの発信内容
- 名刺やWebサイトのデザイン
- 対面でのコミュニケーションスタイル
- 提供するサービスの品質
これらすべてが一貫したメッセージを発信することで、強固なブランドが構築されます。
パーソナルブランディングを一人で行うのは、なかなかしんどい作業です。なぜなら、自分の「強み」は自分ではわからないから。そんな時、お役に立ちます。
「自分発掘コンサル」は、こんな方におすすめです。
- 転職やキャリアチェンジを考えているが、自分の強みが分からない
- 副業や起業を検討しているが、何から始めれば良いか迷っている
- 漠然と「今のままではいけない」と感じているが、方向性が見えない
- 自分の可能性をもっと広げたいと思っている
「自分発掘コンサル」は、基本的に対話を通じてあなたの中にある「才能」や「本当の強み」を見つけ出し、それをどう実社会に活かしていくか?を共に考えていきます。
「自分発掘コンサル」で得られること
- 才能の明確化:あなただけの独自の強みを発見
- 活用戦略:自分の才能を、キャリアや人生にどう活かすかのプラン立案
- 成長ロードマップ:才能をさらに伸ばすための実践的ステップ
- マインドセットの転換:自分の可能性を信じる思考への変化
「自分発掘コンサル」についてのお問い合わせ・ご相談は、下記リンクから、お気軽にご連絡ください。
まとめ:あなたの魅力を「端的に伝える」ために
セルフブランディングの本質は、自分の強みを、顧客が求めるベネフィットに変換して伝えることです。
今日から実践できる5つのステップ
- 自分の強みを棚卸しする:経験、スキル、実績をすべて書き出す
- ターゲットを明確にする:誰の、どんな悩みを解決するのか
- フィーチャーをベネフィットに変換する:「だから顧客にとって何が嬉しいのか」を常に考える
- 成功事例を研究する:優れたキャッチコピーをストックし、分析する
- 数稽古をこなす:完璧を求めず、まず50個のアイデアを出す
トム・ピーターズからのメッセージ
「当たり前のことを繰り返すと(繰り返す必要があるものは、何度でも繰り返す)、いつも同じ人と付き合い、いつも同じ雑誌を読み、いつも同じ会議に出ているようでは、蛸壷の中で暮らしているのと変わらない。十年一日のごとく暮らしていれば、あなたのブランド力はいっこうに磨かれない。」
革命の時代を生き抜くために頼りになるのは自分の腕だけ。ひとめで違いが分かり、お客さんの期待を裏切らず、人の心を癒す、そんな**「ブランド人」**になる方法を、今日から実践していきましょう。
あなたも自分というブランドを、一緒に磨いていきませんか?
参考文献・出典
- トム・ピーターズ『トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦〈1〉ブランド人になれ!』CCCメディアハウス、2000年
- トム・ピーターズ『エクセレント・カンパニー』
- ピーター・モントヤ『パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す』東洋経済新報社、2005年(本田直之訳)
- デイヴィッド・アーカー(David Aaker)によるベネフィット分類理論
- セオドア・レビット「Marketing Myopia」Harvard Business Review, 1960


